2007年4月28日付の日本経済新聞朝刊19ページの「貯蓄から投資へ」の記事について

①株式投信の実態について

「追加型株式投資58兆円の内訳は、毎月決算型17兆円とファンドオブファンズ16兆円の2つで全体の半分以上を占める。本命のはずの国内株式型は、8兆円弱にすぎず株式投信全体の15%にも達していない。また外国債券を主要対象とし、毎月分配金を支払うタイプのファンドと説明されている毎月決算型が、なぜか株式投信に分類されている。」
(※記事は日経新聞より引用)



現在の投信分類は運用会社の実務に合わせた分類になっており、投資家目線の分類とはなっていない。

例えば、上記の株式投信について述べると、『株式を少しでも組み入れる可能性のあるものはすべて"株式投信"と呼ぶ』とされており、実際の投資対象と一致しないことが多いからだ。これについては、投資信託協会が2007年中に投信の分類を見直すとのことである。一歩前進と言ったところではないだろうか。




②毎月決算型の問題点について

「グロソブ(グローバル・ソブリン)の別名で株式投信のチャンピオンの座に上り詰めた毎月決算型は、課題が少なくない。投資家のニーズに真に応えたことが、今日の大成功の理由だと高く評価する声もある。しかしながら、銀行窓口では定期預金が満期になると毎月の高分配をセールストークに、毎月決算型へと乗り換えを勧めることが多い。なかには過去の実績を聞いて、毎月の分配があたかも確実であるかのように錯覚する預金者もいるようだ。もし運用環境が逆回転をして基準価格が激しく下落しても何事もなしで済むのだろうか。」



この部分にはかなり誤解を招くような内容が含まれていると思う。冒頭において、"グロソブ=毎月決算型"という書かれ方がされているが、これは全くの間違いである。

グローバル・ソブリンは、先進国のソブリン債に投資する投資信託であり、比較的安定的なリターンを得られるという特徴をもつ商品である。それに対して、毎月決算型というのは、投資信託の決算を毎月行い、その収益の一部から投資家に現金の形で配当を行うことである。グローバル・ソブリンであれば必ず毎月決算型にする必要があるというわけではないし、不動産投資信託など他の投資信託でも毎月決算型の投資信託が多い。



運用側としては、分配型の商品をつくりたくないというのが本音である。
分配のたびに税金がかかり、分配金の分だけ投資信託の基準価格が下がっていく。分配金のほとんどは同一商品への再投資にあてられている、という現状を考えると、分配せずに投資し続けるほうが税金の分だけ得である。



・現金を見ないと増えている実感がわかないのか。
・株式のように、価格が上がりすぎるといつかは下落するという思いがあるのか。
(※投資信託では、株式投信であっても、その都度投資企業の変更が行われており、あがりすぎれば下がるという傾向はない。)



また銀行窓口での販売の問題点が指摘されているが、これは毎月決算型の問題というよりは販売窓口の問題である。
まず、投資信託は元本が保証されていない金融商品である。また定期分配型でも、分配額が一定のものもあれば、ボーナス分配として半年に一回大きな額を分配するようなものもある。投資家(購入者)がいまだ毎月の分配が確実であるというような勘違いをしているのであれば、それは販売側や運用側のいまだ足らない部分であると言えよう。



投資家(購入者)は自分の考えをもとに商品を選ぶのが好ましい。
お金を預ければ勝手に増やしてくれるという感覚で購入するのではなく、自分の経済見通しとそれぞれの投資信託の運用方針とが合致する商品を購入し、資産形成を目指すことが本来の姿である。商品によっては、今の経済状態がずっと続くことを念頭においている商品もある。投資家(購入者)側でも注意すべきところであり、銀行窓口などで、どういう前提で、どういう運営方針を持っている商品なのかを必ず確認すべきである。




ファンドオブファンズの問題点について

「人気のファンドオブファンズも課題なしとはいえない。投資リスクの軽減には分配投資が肝心とアドバイスされ、素直にファンドオブファンズを購入する投資家は少なくない。しかし望むらくは、複数の投信を組み合わせた効率のよい分散ポートフォリオが提案されることである。投資家はファンドオブファンズの問題点の一つである二重のコスト負担を知っているのだろうか。」



ファンドオブファンズは、運用会社で運用されている複数のファンドの中からいくつかのファンドを選択し、投資するという商品である。通常のファンドを組成するのに必要なコストに加え、ファンドの中からファンドを選び出すという部分でのコストが発生する。これが上記の二重のコストと呼ばれる部分である。



また投資対象(株、債権、不動産、商品等)の割合が商品ごとにあらかじめ決められており、それぞれの投資家(購入者)の希望する割合で投資対象を選べるわけではないという問題もある。



個人的な意見としてではあるが、投資信託への理解が不十分な方は、比較的安定的な債券ファンドから投資信託に触れ、株式投信(ここでの株式投信とは、純粋に株式を投資対象とする投資信託とする)や不動産投資信託に手を伸ばしていくのがよいのではないだろうか。基本的に仕組みを理解していない商品を購入すべきではない。




④貯蓄から投資へ、について
「株式投信の両横綱がグロソブとファンドオブファンズという現実の姿は、貯蓄から投資への道のりはまだ先が長いことを感じさせる。」



ここでももう一度確認する。

グロソブに問題があるというより、毎月決算型のように分配金をもらうことが非効率であるということがわかっていないということに問題があるのである。

ファンドオブファンズに関しては、いくつかのファンドの割合を自分で決めることが面倒、あるいは無理であるのであれば、二重のコストを払っていることを理解しておくべきである。しかし、ファンドの割合を考える程度はできることが望ましいと思う。



貯蓄から投資への道のりはまだ先が長いという意見に対しては同じ立場である。