GDPデフレーターとCPI、どっちがよいの?


「参考:GDPデフレーターの下落率はなぜ大きいのか?日本銀行調査統計局2003年6月」



物価の変動を見るときにCPIやGDPデフレーターを用いることが多い。


・CPIは小売物価統計調査(総務省調査)の平均小売価格から個別指数を作成。
家計調査(総務省調査)からウェイトを作成し、統合して全体の指数を作成する。

GDPデフレーターは、名目GDPを実質GDPで割ったものの変化率で与えられる。
GDPは、個人消費、民間設備投資、政府最終消費支出、外需で説明される。)


これらはそれぞれの指標のもつ特徴により、まったく異なる動きをすることが多い。





参考にしたレポートによると2つの特徴を挙げていた。

1)GDPデフレーターの前年比は、CPIの前年比を恒常的にかなり下回っている。

2)GDPデフレーターの方が短期的な振れ幅が大きい。



まず1)について主に2つの理由がある。

a)GDPデフレーターカバレッジが広く、(CPIに含まれていない)価格下落率の大きな投資財を含んでいること

b)CPIとは逆方向のバイアスを持つ指数算式で作られていること



a)に関しては、「品質調整」等をイメージすればわかるだろう。
品質調整のために、恒常的に下落圧力がかかっているのである。

※品質調整…たとえばパソコンの表面価格が20万円のままで変化していなくても、機能が2倍になったと評価できる場合は、価格は半値になったとみなす統計処理のこと。


b)に関しては、「ラスパイレス指数」と「パーシェ指数」がキーワード。

※CPIはラスパイレス指数GDPデフレーターはパーシェ指数。
ラスパイレス指数では、基準時点の数量ウェイトで各指数を合成するのに対して、パーシェ指数では、比較時点の数量ウェイトで合成する。



これがどういう違いを生むか?


ラスパイレス指数の場合
常に1:1のウェイトえ食料品価格とパソコン価格を合成する。
パソコン価格は品質調整により絶対水準が低くなっていくが、そのとき指数の低下幅も小さくなっていく。
したがって、数量ウェイトが固定されているラスパイレス指数の場合、パソコンの価格変動の反映度合いが小さくなっていくのである。


・パーシェ指数の場合
品質調整によって価格水準が低くなると、パソコンの数量が増えるとみなされる。
その結果、パソコン対食料品のウェイトが上昇し、影響力が高まる。




また価格と数量が大幅かつ逆方向に変化しつづけるIT関連材のような財が存在し、基準地点から時間が経過するほど乖離が大きくなる。

結果的に、ラスパイレス指数であるCPIについては上方バイアスがかかっており、パーシェ指数である消費デフレーターには下方バイアスが生じていると思われる。





次に2)について3つの理由が挙げられている。

a)原油価格などの交易条件の変動に影響されやすいこと

b)需要項目の構成変化に左右されやすいこと

c)特殊要因で大きく振れる場合があること




ここでは、a)についてのみ触れる事とする。

GDPデフレーターGDP自体の考え方に沿って「国内価格+α輸出価格ーβ輸入価格」という概念で作られており、輸出入の相対関係(交易条件)の影響を受ける。

たとえば、原油価格が上昇し輸入価格が上昇するとき、日本のように国内価格への価格転嫁の遅い場合では、GDPは低下する。

GDPデフレーターは産出価格の低下や投入価格の上昇など、企業収益を減少させる価格変動はデフレーターの低下要因という考え方でなっている。

これは付加価値をはかるGDP統計に即した考え方である。





GDPデフレーターから輸出入価格、すなわち交易条件の影響を排除した内需デフレーターのほうが基調的な物価変動を表していると言える。