久しぶりに頭を使ってみた。あと、日本の資産運用業界について思ふこと


ここ2週間、会社の社外研修として、ファイナンス等でご活躍されている東大を中心とした先生方に授業していただく機会がありました。
CAPM金利の期間構造、デリバティブのプライシング、信用リスクの評価、ファクターモデルとαの追及等、MBAファイナンスコースの内容をざっと概観したような感じでした。

内容は多岐に渡り、全てを理解できたわけではありませが、今自分が勉強しなければいけないことや足りていないことがたくさん発見できました。
また多くのインプットを浴びるように受け続けたので、会社やその他で活かすヒントをたくさん見つけることができました。
業界他社の優秀な方々との飲みでも、いろいろと刺激を受けられました。
ぜひ、参加することをお勧めします。
詳細はweb等で「野村マネジメントスクール」と調べてみてください。





この研修の授業スケジュールから講師アテンド等を担っている、東大の小林教授の言葉が非常に示唆に富む内容でしたので、ここで少しご紹介させていただきたいと思います。



まずは授業を受けた人間について、今後の活躍を期待する旨の話がありました。

この研修を修了した卒業生達の中には東京海上アセットマネジメントの社長である大場さんや千葉銀行頭取の佐久間さんをはじめ、日本の金融業界でご活躍されている方がいらっしゃるようです。
また小林先生の研究室でも、外資系金融機関で若くして部門ヘッドを任される人間、独立してヘッジファンドを立ち上げて活躍されている人間がいるようです。
30代で部門トップになれるくらい、もっと若い人間が突き上げていかなければいけないなと感じました。



また先生がお気に入りだった3つ星シェフがとうとうお店をたたんでしまったという話を例に出して、資産運用業界全般に対する叱咤激励、問題意識についてお話がありました。

フランス某地域にあったそのお店に小林先生が最初に行ったのは、まだ2つ星の時代だったそうです。
その後、シェフの死に物狂いでの頑張りの結果、3つ星になったそうなのですが、ある日突然、店を閉めることにしたそうです。
その時に言ったのが、「ミシュランの☆を維持、獲得するために死ぬ気で毎日頑張ってきたが、ある程度の名誉やお金も入り、そろそろいいのではと思うようになった」とのこと。

実は自分達がこの研修プログラムを受ける最初の日に小林先生から「君達は、資産運用業界での唯一無二のシェフになれ」という趣旨の言葉を受けていたのです。
そのための武器や材料をこの場で学んでほしいという思いだったと思うのですが…。

その話とも絡ませて、もう一つ言っておくことがあると付け足されたのが、以下の言葉でした。

「独立した起業家、またシェフ達は死に物狂いで毎日を過ごしている。
果たして、日本の資産運用業界にそのようながむしゃらさがあるだろうか?
少なくとも、ここに来た君たちには、会社がどうこうとかではなく、自分自身が企業の社長であるという気概を持ってやってほしい。」

海外の金融機関、また外資系金融機関には、その道で専門家となった方々が自らの理論を試すがごとく、会社を作っていく。
死に物狂いで頭を使った人が勝負している世界という気がしました。



日本の金融機関があまりにもドメスティックな産業になっていること、リスクをとらなさすぎる点についても、警笛を鳴らされていました。

みんなでいかにリスクをとらなくていいようにするかだけを考えているのではないか。
中国では北京大学を卒業しても国内の就職口が限られているために、今では海外への留学を考える人が増えているそうですが、就職の厳しい中国においても例外なのが金融機関だそうです。
金融機関での就職を狙い、日本のファイナンス学位を目的に留学してくる学生が増えてきているとおっしゃっていました。



日本の資産運用のレベルがあまりにも稚拙であるという点についても、以下の例をもって触れられていました。

昨年度、ある大学等で100億円の損失を出したといって騒がれていました。
また東京大学ですら、基金を債券運用することも難しくなっている状況とのことです。
新聞等でも、単に損失額が大きくなったことのみを取り上げて、本質的に何が問題かを議論しているものはなかったように思います。

それに対して、ハーバードやエール大学等の海外大学では、むしろ運用資産の対象をより流動性のないプライベートエクイティや不動産、ヘッジファンド等に拡大している。
これは単に利回りを追求しているということではなく、長期投資家※はより流動性のない資産を保有することのできる投資家であることから、その部分のプレミアムを獲得しにいくためにあえてシフトしているのだということでした。
昨年を見れば、ハーバード等は約1兆円弱の損失を出しています。
しかし、彼らの議論では資産運用をやめるとかそういった話は全く出ていないそうです。
大学キャンパスの拡張はややペースを鈍化したものの、中国には新たなキャンパスを作るなど、積極性を失うことはないようです。

※ちなみに、海外の大学では資産運用からかなりの経費をまかなっているらしく、保険会社のように純粋な長期投資家とは言えないそうですが。