毎月分配型投信の分配金引き下げについて(引用)とコメント

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毎月分配型の投資信託で、分配金を引き下げる動きが相次いでいる。
海外の低格付け債や新興国通貨などで運用してきたが、足元の利回り低下や円高を受け運用収益を稼げなくなってきた。
年換算10%を超えるような高分配を続ける目的で資産を取り崩してきた結果、原資が枯渇する懸念が出てきたことが大きい。
元本が半値以下に落ち込んでいるケースもあり、高分配の限界が近づきつつある。



分配金の出所は2つある。


1つは、その月に稼いだ運用収益で、債券や株式から比較的安定して得られる利息や配当が柱となる。
もう1つは、前の月から繰り越した分配原資で、過去に積み立てた利益や、会計上の見なし運用益が相当する。



1月に分配金を引き下げた「ピムコ・グローバル・ハイイールド」を例に、減配の真相を見てみよう。
同ファンドは1月11日のリポートで、債券の利回り低下と円高により利息収入が減ったことを理由に挙げている。
運用報告書から推計すると、過去6カ月間の利息収入(経費控除後)は、1万口当たり月30〜40円ほど。一方、この間に月100円の分配を続けていた。
差額の60〜70円分は、前の月から繰り越した分配原資を取り崩すことで賄っていた計算になる。
繰り越し分配原資はじわじわ減っている。
昨年12月7日時点で1万口当たり1322円と、その5カ月前より300円弱少なくなっていた。
仮に今年1月以降も100円分配を続けていたとして、65円分を取り崩しで賄うとすれば、約20カ月先に繰り越し原資は枯渇する計算だった。
今回、分配を15円引き下げたことで分配可能月数は26カ月に伸びた。



昨年11月に100円から70円に減配した「エマージング債券ファンド(毎月分配型)」の場合、毎月の利息収入は30円前後で、70円前後を繰り越し原資から取り崩してきた。
このため、11月時点で繰り越し原資は679円まで減っており、このままでは約10カ月しか100円分配ができない状態だった。
70円分配に引き下げ、16カ月程度に伸びた。
他の債券に投資するファンドもおおむね同様の仕組みで分配金を引き下げたとみられる。



「グローバル好配当株オープン」など、株式や不動産投資信託(REIT)を組み入れるタイプは、円高の影響もあって売却益を上げにくくなったのが響いているようだ。



減配ファンドの多くは、足元の運用収益を超える分配を続け、資産を取り崩してきたこともあり、当初1万円だった基準価格は大きく下落。
中には4000円台というケースもある。
投資家から見たリターンは購入時の基準価格によるが、値下がりしていれれば、過去に多額の分配金を受け取っていたとしてもトータルで見たリターンは大きく目減りする。



ここまでが引用した記事の内容。

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以下は運用会社側からの意見というか、運用会社に勤める一人として言いたいこと。



分配金の引き下げは、ファンドの巧拙を表すものではなく、結局はトータルでのリターンしかファンドを評価するものはないはず。


分配金利回りという表を出してくる販売会社の人は、おそらくファンドのことは何もわかっていない。
ただし、ファンドのことを分かっていないというのは販売会社の人だけではなく、彼らに情報提供しているわれわれ運用会社側にも責任がある。


金融商品だけに限らず、何でもそうだが、客が分配金を求める限り、分配金利回りという意味のないものが巷ではやることになる。
これが恐ろしいのは、分配金で無理をする、つまり基準価額を削ってまで分配金を払うほうが、分配金が一定の場合、利回りで見れば高く見えるということである。


販売会社で買う際に一度、こうたずねてもらいたい。
・自分で買うとしたらどのファンドにしますか?
・今、売れているからという理由や、分配金利回りが高いという理由以外で何か勧めるファンドはありませんか?
そこからがやっと議論が始まると思う。




あと高分配に限界が来ているという指摘は半分正しく、半分は正確ではない。


世の中ではやっている「通貨選択型ファンド」と呼ばれるものは、それまでに存在していたファンドとは似て非なるものである。
それは分配金を出せるかどうかではなく、分配金を出せるように設計されたファンドであるということである。


結局は客のニーズに応える形で分配金という仕組みが設計されたところまでは良かった。
しかし、分配金は高ければいいという誤った認識を広めてしまったことは日本にとって最大の不幸だし、日本における金融リテラシーの低さとあいまってしばらく続きそうだということが非常に残念でならない。