「なんで、ヘッジプレミアムが発生するのか?」


よく仕事をしていると、この質問を受けることがあります。
きちんとした回答は仕事の中でもやっているつもりなのですが、時間の制約等があってなかなかうまく伝えることができていないのが現状です。


絵とか全く使っていなくて申し訳ないんですが、ある程度理解ある人むけに、簡単な説明メモを書いておこうと思います。
投資家や投資家に説明していただく銀行や証券会社の人達に、どうやってわかってもらうかは引き続き努力していきます。
※大雑把なイメージを伝えるために書いている内容ですので、厳密には異なることもあります。ご了承ください。



以下は、簡単な例ですが、順番に呼んでいただければイメージいただけると思います。



100ドルの債券を持っている場合を考えましょう。
とりあえず、この期間における債券の値段は100ドルのままとします。
1/1の為替レートは100円/ドル、1/27、2/1の為替レートが80円/ドル。
80円(円高ドル安)になると、100ドル×▲20円=▲2,000円になります。



まず1/1にドル売り、円買いの為替予約を行います。
受渡日は2/1とします。
現時点ではドルと円の金利差は無視して、100円/ドルで予約できるとします。
為替予約というのは、将来の値段を今決めてしまうことで、イメージとしては今のうちに100円/ドルが固定されてしまえば、債券の値段が変化しない今の場合では、為替が円高(例では、80円)に振れたとしても為替の影響は受けないという感じです。



具体的にどうなっているのかを見てみます。
2/1には
ドル売りなので、−100ドル
円買いなので、+10,000円⇒A
(お金の移動としては、海外旅行であまったドルを円にもどすようなイメージ)
となります。



ちなみに、100ドルの債券は持っているのですが、キャッシュを持っていないとします。
もし1/1の為替予約だけをした場合には、どうする必要があるか?
100ドルを売ることになっていますから、手元の債券を売って100ドルを用意しなければいけません。
これはナンセンスです。
為替予約によって得たいのは、あくまでも債券を持ちながら、為替のリターンのみかえるということなのですから。



ここでは1/1に行った為替予約と反対の為替予約を行います。
1/27(通常は2/1の2,3日前であることが多い。特にいつやっても問題ありません。)に2/1を受渡日とするドル買い、円売りの為替予約を行います。
レートは1/27の為替レートを基本に決まりますので、ここではT+2の通常取引で行ったとして、80円/ドル。



具体的には
ドル買いなので、+100ドル
円売りなので、−8,000円⇒B
(お金の移動としては、海外旅行に行く前にドルを買うイメージ)となります。



AとBをあわせると、
ドルの受渡は相殺されてなし。
円は+10,000−8,000円=+2,000円となります。



為替予約を行わなかったときの債券部分は▲2,000円でしたが、
為替予約により+2,000円となりますので、
▲2,000円+2,000円=差し引きゼロとなります。
これは、全体の資産状況が変わらないということを示します。
つまり、為替レートの変化によらず価値が一定となりました。



これは円安になる場合でも同じです。
1/27〜2/1の為替レートが120円/ドルとなる場合を考えてみます。
債券の値段が100ドルのまま変わらないという前提であれば、100ドル×(+20円)
=2,000円のプラスとなります。
為替予約を行わなければ、このプラスが獲得できます。
外債投資のメリットですね。



しかし、為替予約を行うとどうなるでしょうか?
まず1/1にドル売り、円買いの為替予約を行います。
受渡日は2/1とします。
現時点ではドルと円の金利差は無視して、100円/ドルで予約できるとします。



上と全く同じで
2/1には
ドル売りなので、−100ドル
円買いなので、+10,000円⇒C
となります。



同様に1/27に行う反対の為替予約は
ドル買いなので、+100ドル
円売りなので、−12,000円⇒D
となります。



CとDをあわせると、
ドルの受渡は相殺されてなし。
円は+10,000−12,000円=▲2,000円となります。



為替予約を行わなかったときの債券部分は+2,000円でしたが、
為替予約により▲2,000円となりますので、
+2,000円▲2,000円=差し引きゼロとなります。
これは、全体の資産状況が変わらないということを示します。
つまり、為替レートの変化によらず価値が一定となりました。



ここまではよろしいでしょうか?
ここまでは為替予約時のレートを100円/ドルとしたことから、ヘッジプレミアム/コストという概念は出てきません。
次はフォワード・レート(為替予約)に話を移します。



簡単にルールを与えます。

  • 相対的に金利の高い通貨に対して為替予約をするとき⇒割安なレートで予約できる。
  • 相対的に金利の低い通貨に対して為替予約をするとき⇒割高なレートでしか予約できない。

金利平価等の考えは、ここでは省略します。)



先ほどの例にならうと、
・相対的に金利の高い通貨に対して為替予約をするとき⇒割安(円なら円安、レアルならレアル安)なレートで予約できる。100.5円
・相対的に金利の低い通貨に対して為替予約をするとき⇒割高(円なら円高、レアルならレアル高)なレートでしか予約できない。99.95円
どれくらいの割高、割安になるかは金利差に従いますが、ここでは簡単にするために省略します。



1/27の為替レートが80円/ドルとなる場合を考えてみます。
債券の値段が100ドルのまま変わらないという前提であれば、100ドル×(▲20円)
=▲2,000円となります。
為替予約を行わなければ、マイナスになります。



為替予約を行うとどうなるでしょうか?
まず1/1にドル売り、円買いの為替予約を行います。
受渡日は2/1とします。
今回は為替予約元の通貨(米ドル)と比べて、為替予約先の通貨(円)の短期金利が低いとします。
上の例では、99.95円/ドルで予約できるとします。



2/1には
ドル売りなので、−100ドル
円買いなので、+9,995円⇒E
となります。



同様に1/27に行う反対の為替予約は
ドル買いなので、+100ドル
円売りなので、−8,000円⇒F
となります。



EとFをあわせると、
ドルの受渡は相殺されてなし。
円は+9,995円−8,000円=1,995円となります。



為替予約を行わなかったときの債券部分は+2,000円でしたが、
今回は為替予約により1,995円しか入ってきません。
この差5円がヘッジ・コストになります。



次に、為替予約元の通貨(米ドル)と比べて、為替予約先の通貨(レアルなど)の短期金利が高いとします。
ここでは説明のために、ドル円のまま続けます。
100.5円で予約できるとします。



2/1には
ドル売りなので、−100ドル
円買いなので、+10,050円⇒G
となります。



同様に1/27に行う反対の為替予約は
ドル買いなので、+100ドル
円売りなので、−8,000円⇒H
となります。



GとHをあわせると、
ドルの受渡は相殺されてなし。
円は+10,050円−8,000円=2,050円となります。



為替予約を行わなかったときの債券部分は+2,000円でしたが、
今回は為替予約により2,050円入ってきます。
この差50円がヘッジ・プレミアムになります。



1/27にドル円が80円/ドルになった場合で、整理してみます。
・為替予約を行わない場合⇒▲2,000円…米ドルコースにあたります。
・相対的に金利の高い通貨に対して為替予約をするとき⇒100.5円で予約⇒+50円
…豪ドルやレアル等のヘッジ・プレミアムにあたります。為替の上昇/下落は考慮していません。
・相対的に金利の低い通貨に対して為替予約をするとき⇒99.95円で予約⇒▲5円
…円コース等のヘッジ・コストにあたります。



1/27と2/1の為替レートを同じとして考えましたが、ここは違っても全く問題ありません。
1/27に反対取引を行うのと同時に、またさらに新しい為替予約を行えば、1/1〜1/27の期間と同様に1/27〜の期間を考えることができます。
同じことの繰り返しになります。



・米ドルコースと円コースは何が違うのか?
円コースは為替予約を行うことによるヘッジ・コストだけにとどまるものの、米ドルコースは円高に進んだ局面でそのまま為替下落の影響を受けます。



  • 為替予約はその通貨に投資するのと同様の効果
  • もっと厳密にいうと割安、割高なレートで予約できる⇒プレミアム、コスト
  • 為替予約はその時にお金のやりとりがないので、債券に投資しながらできる。
  • 例。ドル建て債券+ドル売り/レアル買いの予約⇒為替はレアル、金利の影響はもともとの債券